


水道筋の町に溶け込む、みんなのサロン。 
-BI.TO.WA
神戸市灘区、どこか懐かしさの残る「水道筋商店街」に店を構える、ワインショップ併設の美容室です。
店名の BI.TO.WA(ビトワ) は、美容 Beauty とワイン Wine の頭文字から名付けました。
ワインショップとしては、ナチュラルワインを軸にしながら、クラシックなスタイルのワインもバランスよくセレクト。常時およそ700種類のワインを揃えています。
「今日はカウンターで、気軽にグラスワインを」「髪を切ったあとに、コーヒーを一杯」「今夜の食卓に並べる1本を選びに」と、美容室としてもワインショップとしても、使い方は自由。
それぞれの時間、それぞれの距離感で、思い思いに過ごしていただける場所です。

拓也さん:
20代の頃はバーテンダーとして働いていて、そこから少しずつお酒の世界にのめり込んでいきました。
その中で「一番自然に近いお酒」と感じたのが、ワインだったんです。ワインは基本的に、ぶどうと酵母だけで造られるお酒。水を足さないという点で、ビールや日本酒、ウイスキーとは大きく違います。
農業にとても近く、「自然と人の手仕事が、そのまま味になる」感覚が面白くて、そこに強く惹かれました。
その後、ソムリエの資格を取得してからは、フレンチレストランなどでワインの仕事を続けてきました。
美幸さん:
私は、最初から「美容師になりたい」と思っていたわけではありませんでした。「人を笑顔にできる仕事がしたい」と考える中で出会ったのが、美容師という仕事だったという方が感覚として近いですね。美容室から出てこられるお客さんの、少し明るくなった表情を見て「美容師って、人を笑顔にできる素敵な仕事だな」と感じたのがきっかけでした。
神戸・元町の美容室で長く働いたあと、夫の仕事の関係で屋久島に移り住んだ時期もありましたが、再び神戸へ戻り、今に至ります。
拓也さん:
そうして、僕はソムリエとしてワインの仕事を、美幸は美容師としてサロンワークを、それぞれ続けてきました。その二つを「一つの場所で掛け合わせたい」と思ったことが、BI.TO.WAの始まりです。実際に形にしてみると、少し不思議なお店になりましたが、自分たちにとってはとても自然な組み合わせでした。
両親はこの町で理容室を営んでいて、僕は“商店街の床屋の息子”として育ちました。自分自身は同じ道には進みませんでしたが、その原体験があったから、水道筋という場所で「髪」と「ワイン」を掛け合わせたお店を持つというイメージが、最初からどこか頭の中にあったんだと思います。
拓也さん:
このエリアはファミリー世帯も多いので、大人だけでなく、お子さん連れの方もよく来られます。美容室でお子さんのカットをしている間に、待っているお父さん・お母さんがワインやコーヒーを楽しんでいかれることもあれば、夜にはお子さん連れでちょっと一杯飲んで帰られる方もいたりして。普通のワインバーやワインショップだと、子どもを連れて行きづらい雰囲気のお店も多いと思うんですが、BI.TO.WAでは「子どものいる景色」が自然に存在しています。
実は酒場も美容室も、どちらも“サロン”っていうんです。サロンには「人が集まって語り合う場所」という意味があるんですが、ここは年齢や性別に関わらず、いろんな人が自然と集まれる場にしたいと思っています。
オープン当初は「ワインショップと美容室ってどういうこと?」と不思議がられることも多かったんですが、今は「ワインだけ」「美容室だけ」はもちろん、「両方楽しむ」方も増えてきました。
美幸さん:
サロンとしての「居心地のよさ」も大事にしています。座り心地の良い椅子やシャンプー台、照明…どれもこだわって選びました。
技術面では「可愛く、素敵にする」のは大前提ですが、それ以上に「ここに来る時間ごと、気持ちよく過ごしてもらえるか」を大切にしています。カットが終わったあとに「可愛くなって嬉しい」「また来たい」と言ってもらえたときは、やっぱり何度聞いても一番嬉しいですね。お子さんのカットも多いので、「泣かずに座れた」「前より楽しそうに来てくれた」みたいな小さな変化も、私にとっては大きな喜びです。

美幸さん:
私は結婚してこのエリアに来たのですが、暮らしてみると本当に住みやすい場所だなと感じます。アクセスもよくて、ファミリー世帯もどんどん増えていて、日常の買い物も外食も、町の中で完結してしまうくらい便利です。
拓也さん:
水道筋は震災で一度大きく姿を変えましたが、そのあとも商店街としての活気がずっと残っている町なんです。昔ながらのコロッケ屋さんやお総菜屋さん、大衆酒場や温泉銭湯がある一方で、新しいカフェやイタリアンも増えていて、古いものと新しいものが良いバランスで共存していると感じます。
地元の人にとっては当たり前の景色かもしれませんが、外から来た人には「懐かしさと今っぽさが混ざった、ちょっと特別な商店街」に見えると思います。一度遊びに来れば、その魅力に気づいてもらえるんじゃないでしょうか。
拓也さん:
実は近々、実家の床屋をリノベーションして美容室として生まれ変わらせる計画があります。父が80歳を迎えるタイミングでお店を引退し、今は動いていない状態なので、「この場所をどう活かそうか」とずっと考えていたんです。
場所は水道筋の一丁目。今のBI.TO.WAは六丁目にあるので、将来的には「商店街の両端から水道筋を盛り上げる」ような形になればいいなと思っています。
美幸さん:
その新しい美容室の方は私が担当する予定です。今のお店で出会ったお客様にも通っていただきやすいように、少しずつ準備を進めているところです。
場所が変わっても、これからも同じように“お客様の笑顔に寄り添う美容師”でいたいと思っています。
拓也さん:
もし僕が床屋を継いでいれば、四代目になるはずでした。僕がハサミを握るわけではありませんが、妻と力を合わせ、水道筋の「サロン」としてバトンを繋いでいけたらと思っています。




