


「正しく」より「自由に」。書く楽しさが滲むひととき。 
-Atelier Seeds 坪井 なつみさん / Elderflower. 石橋あゆみさん
Atelier Seeds 坪井さん:
大阪・茨木市と、神戸でカリグラフィー教室を主催しています。書くことの楽しさをお届けできるよう、イベント出展もしています。メタルエンボッシングアートで文字を活かす作品も制作しています。
Elderflower. 石橋さん:
カリグラフィーのワークショップを開催します。初めての方も歓迎です!一緒に楽しみましょう。
当時制作していた押し花の作品に、文字を添えたくなったことがきっかけです。そこでカリグラフィーの体験に申し込みました。
実は子どもの頃、絵を描くことが好きで、マンガを描いていた時期もあったんです。ペンで線を引く感覚や、描くことに没頭する時間。その記憶が一気に蘇ってきて、「これは楽しい」と感じました。
そこから気づけば、もう20年近くカリグラフィーを続けています。


一番大切にしているのは、その人が「どんな目的でカリグラフィーをしているのか」を知ることです。
作品に文字を添えたい方もいれば、ただ集中する時間を持ちたい方もいます。本当に理由は人それぞれですね。だから、なるべく焦らせないことを意識しています。進むペースも違いますし、「こうしなきゃいけない」という型にはめないようにしています。
最近は子どもたちに教える機会もあって、そこでも改めて気づかされることが多いです。
大人はどうしても「お手本通りに書かなきゃ」と思いがちですが、子どもたちはもっと自由で、のびのび書く。その姿を見ていると、本当は書くことって、もっと遊びに近くていいんだなと感じるんです。
これからも、「正しく書く」よりも、「書く時間を楽しむ」ことを大切にできる場を続けていきたいと思っています。
子どもが少し手を離れて、そろそろ自分の好きなことをしてみようかな、と思ったのがきっかけです。
以前からカリグラフィーには興味があったのですが、教室もあまり見かけず、なかなか一歩が踏み出せずにいました。調べている中で120 WORKPLACE KOBEで開催されている坪井先生のレッスンを知り、体験に参加しました。
初めてのレッスンで、気づいたら2時間があっという間に過ぎていて。こんなふうに集中できる時間が、日常の中にはなかったなと感じたんです。
最初は自分が書くことで精一杯でしたが、続けていくうちに「私にもできるかもしれない」という気持ちが、少しずつ芽生えてきました。
今回のワークショップでは、初めて教える側として参加します。誰かのために準備をすることで、自分自身の理解も深まっていると感じています。文字一つひとつをどう説明すれば伝わるのかを考える時間は、学ぶ側のときとはまた違った気づきがありますね。


坪井さん:
カリグラフィーには、明確なゴールがありません。ここまで続けてこられたのも、「もっと上手になりたい」という気持ちがあったからだと思います。
長い歴史がありながら、まだまだ新しい可能性を秘めているところも魅力です。デジタル技術と組み合わせて、アナログで描いた文字を活かすこともできます。「まだ別の表現方法があるかもしれない」と考えると、今でもワクワクしますね。
それから、道具を楽しめるのも大きな魅力です。お気に入りは、ナガサワ文具センターの「Kobe INK物語」。神戸の街にちなんだ色が、なんと84色もあるんですよ。
石橋さん:
私にとって一番大きいのは、とにかく集中できる時間が持てることです。普段の生活では、ここまで一つのことに没頭する時間はなかなかありません。文字を一つひとつよく観察しながら書いていくので、自然と集中して、気持ちも落ち着いていきます。
頭の中が静かになって、「今ここ」に意識が向く感覚があって。それがとても心地いいんです。
デジタルではなく、紙に向かって手を動かす。その行為そのものが、心を整えてくれているように感じています。
坪井さん:
今回のように、生徒さんと一緒に場をつくったり、活動したりする機会を、これからも増やしていけたら嬉しいです。誰かと一緒にカリグラフィーを広げていく、そんな関わり方ができたらと思っています。
また、カリグラフィーに限らず、「書くこと」そのものを楽しんでもらえる入口を、もっとつくっていきたいです。万年筆やペン、インク、紙。道具に触れるだけでも、書くことはぐっと身近になります。でも最近は、実際に手に取れる場所が少なくなってきました。
インクの色の違いを見たり、ペン先の感触を確かめたり。「書くって楽しいかも」と思ってもらえる、そんなきっかけをつくっていけたらと思っています。
石橋さん:
小さな教室のようなことができたらいいなと思っています。カリグラフィーと向き合う時間の心地よさや、手書きの温かさを、少しずつ誰かと共有できたら嬉しいです。自分が感じてきたこの楽しさを、同じように楽しんでもらえる場を、小さく続けていけたらと思っています。