


ときめき運ぶ、肩肘張らないお菓子とワイン。 
-KILIG
六甲山の麓・芦屋川に佇む、小さなお菓子屋です。
フランス産発酵バターやお塩、淡路島のたまごや国産バターなど、こだわりの食材を使用したお菓子をお楽しみいただけます。母体はワインの輸入・卸を行う会社ということもあり、店内にはナチュラルワインを中心に200〜300種類ほどのワインも並びます。
KILIG(キリグ)とはタガログ語で「お腹の中に蝶が舞っているような、ときめきや喜び」という意味。日常の中でふと心が動く、そんな瞬間を届けたいという思いを込めて、日々お店づくりに向き合っています。
KILIGは2022年にオープンしました。
立ち上げのきっかけは、コロナ禍によって仕事の環境が大きく変わったこと。母体であるLA GOULUEは、ワインの輸入・卸が専門。販売の多くはレストランなど業務用のBtoBが中心でした。ところが、コロナ禍で外食需要が一気に落ち込んだことをきっかけに「これからは一般のお客様とも直接つながれる場所を持ちたい」と考えるようになったんです。
ただ、ワインショップという業態には、どうしても心理的なハードルがあると感じていて。「詳しくないと入りづらい」「入ったら何か買わないといけない気がする」と感じられることは少なくないですよね。
そこで目を向けたのが、「お菓子」という存在でした。気軽に足を運んでもらえるお菓子屋さんになろう、そこでワインにも出会ってもらえたら。そんな“入口を広げる発想”から生まれたお店です。
空間づくりにおいても、ワインショップであるLA GOULUEとは、あえて真逆の方向を選びました。
コンクリートを基調としたクールな印象のLA GOULUEに対し、KILIGではウィリアム・モリスの壁紙ややさしい色合いの素材を取り入れ、柔らかくナチュラルで、温かみのある空間を意識しています。
実際に来店されるお客様の7割以上は女性で、LA GOULUEとは自然と客層も分かれ、それぞれが異なる役割を担うようになりました。同じ会社が運営していることを知らずに訪れる方も多く、「別のお店だと思っていました」と言われることも少なくありません。KILIGはKILIGとして、独立した世界観を持ち続けたいと考えています。

オープン当初は、お菓子目当ての方とワイン目当ての方で客層が分かれることもありました。甘いものは好きだけれどお酒は飲まない方や、ワインは好きだけれど甘いものは苦手な方もいらっしゃいますよね。想像以上に、両方を一緒に選ぶ方は多くありませんでした。
それでも続けていくうちに、「お菓子と一緒にワインも」「今日はワインも買って帰ろう」という方が少しずつ増えてきたと実感しています。最近では、手土産として「焼き菓子とワイン」をセットで選ばれる方も多く、ホームパーティー文化のある芦屋の土地柄とも、自然に馴染んできたと感じています。
当初思い描いていた「ワインを飲まない層にきっかけをつくる」という役割が、時間をかけて少しずつ形になってきました。KILIGでワインに親しみ、もっと深く知りたくなったらLA GOULUEへ。そんな流れが生まれてきていることも、嬉しい変化のひとつです。
焼き菓子もワインも、「選びやすさ」を大切にしています。
焼き菓子は日によって20〜30種類ほど。すべて店内で手づくりしていて、定番を大切にしながら、週末限定や季節限定のお菓子も並びます。「今日は何があるかな」と、何度来ても楽しめる存在でありたいと考えています。
中でも人気なのが、ワインのコルク栓をモチーフにしたオリジナル菓子「コルク」です。
見た目だけでなく、味わいも“ワインと一緒に楽しむ”ことを前提に設計しています。甘さは控えめで、バターの風味がしっかりと感じられる仕上がり。クッキーやサブレに近い、ポリポリとした食感も特徴です。オレンジワインと相性も良く、おすすめのペアリングです。
お菓子づくりには味噌やスパイス、新生姜など、あえて王道から外した素材を使うこともあります。 「食べたことのないものに出会うワクワク感」を大切にしながら、日々アップデートを重ねています。
ワインは約250〜300種類。あえて迷いすぎないボリューム感に整え、価格帯も2000〜3000円台を中心に、日常使いしやすいラインナップを意識しています。迷ったときは、ワイン好きのスタッフに気軽に相談してもらえたら嬉しいです。


今の目標は、今のカタチを丁寧にきちんと続けていくことです。それが一番難しくて、一番やりがいのあることだと思っています。
「今日はお菓子だけ」「今日はワインも一緒に」。そんなふうに自由に立ち寄ってもらえる存在として、芦屋という場所で、それぞれの暮らしに寄り添い続けていきたいです。