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120 WORKPLACE KOBE

  • 3月23日

ふるさとを育む「知財のコンシェルジュ」大江山特許商標事務所 #120の住人 <前編>

 

 

京都府北部、丹波と丹後の境界にある「大江山」。

雲海の名所として知られ、自然に恵まれた丹州の地を静かに見守ってきました。

その名を屋号に構え、故郷を思う方々の思いに寄り添い続けるお二人がいらっしゃいます。

 

今回ご紹介する120の住人さんは、大江山特許商標事務所の岡恵さん、アハマともみさん。

以前勤務されていた特許事務所で出会ったお二人は「お客様目線のサービスを提供していきたい」という共通のビジョンをもとに、

全国でも珍しい女性2人のみの特許事務所を設立されました。

”知財”を味方にお客様と共に課題に向き合い、「知財のコンシェルジュ」としてあらゆる問題を解決へと導かれています。

 

またお二人が熱い想いを持って取り組まれているのが、「知財を生かした地域ブランディング」。

みなさん、旅行やドライブにいった際には、地域の特産物や名産品を思わず手に取ってしまいませんか?

(そんな私はSAや道の駅でご当地商品を見るのが大好きです…!)

実はその商品に、”知財”が深く関わっているんだそうです。

 

知財がどのようなものでどんな役割があるのか、お二人の取り組みなどについて前編・後編に分けお届けいたします。

 

 

<写真左:所長弁理士 岡恵さん  右:オフィスマネージャー アハマともみさん>

 

 

「法律の説明だけじゃない。お客様目線で一緒に考え、思いに寄り添ったサービスを提供したい。」

 

◯そもそも「知財(知的財産)」とはどのようなものなのか、教えていただけますか?

ざっくりいいますと、知的財産とは、「企業の活動から生まれる、技術やブランド、ノウハウなどの無形の資産」を意味しているのですね。

例えばイチニーマルさんでいうと、心地よいコワーキングスペース運営のノウハウ、利用者様とのコミュニティ構築の方法、オリジナルなイラストを使った情報発信、取引先との人間関係、空間に漂うコーヒーの香りと、シックなインテリアで統一された雰囲気・・・など “イチニーマルさんらしさ” を生み出す固有の経営資源が広い意味での「知的財産」といえますね。

 

オリジナルな取組をしている企業さんには必ず存在しています。

 

これに対して、知的財産 “権”というのは、固有の経営資源のうちの一部をとりだして、「権利」という形をつけたものです。例えば、技術的なアイデアは、特許権・実用新案権、デザインは意匠権、商品名やロゴマークは商標権というように、書類を揃えて、特許庁に出願することによって、知的財産権となるわけです。

 

このように企業を支える無形の経営資源を、法的な権利とし、見える化するのが弁理士の主な仕事です。私も、事務所開設にあたり、屋号関連の3件の商標権を取得しています。

 

知財のコンシェルジュ 登録商標 第6313672号

OIP 登録商標 第6313671号

OIPロゴ 登録商標 第6314256号

 

 

◯ロゴやデザインだけでなく、人間関係や雰囲気といったものも知財になり得るんですね。しっかりと法的な権利を取得しておくのは、やはりとても大事なことなんでしょうか?

はい、あるとないとでは全然違ってきますね。権利は、単に「守る」ためだけのものではないのです。

権利を取得することによって、会社の資産は「見える化」されます。すると注目が集まりやすくなり、商品の優位性がアピールでき、付加価値も高まります。得られた収益は、新たな事業投資の原資になります。このように企業活動が回っていく原動力になるのですね。

 

◯お二人の肩書きでもある「知財のコンシェルジュ」というのは?

以前に勤めていた会社で、知的財産権を管理する担当者になりました。専門知識のないゼロからのスタートでした。専門用語も意味不明で、書類一つ、まともに読めませんでした。

このような自らの体験から、お客様が初めて権利を取ろうと思った時に、何がわかりにくいか、どういったことが心配でいらっしゃるのかといった気持ちが、すごくよく分かるつもりでいます。

 

単なる法律の説明のみにとどまらず、「こういう風に考えたらいいんじゃないでしょうか」と、お客様の立場で一緒に考えるというか、お客様に寄り添ったコンサルティングサービスをしたいとの思いで、「知財のコンシェルジュ」と名乗っています。

 

【大江山特許商標事務所 HP:https://o-ip.pro/ 】

 

 

 

「商標制度は地域活性化の糸口。地域のあらゆる問題が解決へと向かっていくひとつの希望。」

 

◯お二人が注力されている「知財を生かした地域ブランディング」。どんな方からのご相談が多いですか?

地域に根差したものづくりをされている個人の方、企業様、生産者団体様が比較的多いですね。

私たちの志は屋号に表れています。この屋号は苗字ではなくて、(岡さんの)故郷である京都府北部の「大江山」にちなんでいただいています。ふるさとを振興していきたい、小さなことから地域を元気にしていきたいという気持ちで個人事務所を立ち上げまして、ふるさとの「大江山」の名前で活動をしてきました。

 

不思議と、地域に関する産業を盛り上げたいとか、この商品を町の特産品にしていきたいといったような、(私たちと)同じような地域活性化の思い、志を持ってものづくりをされている方からご相談いただくことが多いですね。

 

地域ブランドに関する調査や取材も独自に行っています。農林水産物の商品名や品質の保護に関する論文を発表したり、講演活動したりしてきました。私たちが、「知財を味方に、地域を元気に」、という想いで活動してきたことで、志を同じくするお客様にご縁がつながったような感じです。

 

    

<地域産業を独自取材、その取り組みや魅力をHP・インスタグラムから発信されています。>

 

 

◯同じような気持ちを持つ方と、不思議と繋がりが生まれているのですね。”知財”と”地域ブランディング”というのは

深く関わり合っているんでしょうか?

地域に根差した伝統産業や特産品などは、知的財産の宝庫と言っても過言ではありません。長い歴史をもつ独特の技術や栽培方法であったり、名称であったりですね。

 

このような地域の財産を保護し、地域を活性化することを目的につくられた商標制度の一つで、“地域団体商標制度”というのがあります。兵庫県でいうと「神戸ビーフ」「灘の酒」「豊岡鞄」などが有名ですね。

これはある程度、その名称が有名でないと登録できない商標なのです。地域の生産者団体さんが、知名度を上げるためにイベントをしたり、新聞広告でプロモーション活動をしたりと、そういった地道な活動を積み重ねてこられて、有名になりやっと取得できるものです。

 

 

◯その産業の知名度やブランド力を上げるために、”地域団体商標”の取得というのは重要な意味があるんですね。

そうですね、他にも、伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質等の特性に結びついている産品の名称を保護する制度である、“地理的表示(GI)”も、酒類や農林水産物のブランド化を進めていくための手段として活用されています。

 

これらの制度は、いわば「まちを元気にしていくための一つのタネ」のような役割。

 

地域の皆様が生き生きと、特色を活かしながら暮らしていくためにはいろんな問題が関わっています。商標などの知的財産権の取得によって、全ての問題が解決するわけではありません。しかし、取得が一つの希望となって、なんらかの解決策が提供できるかもしれないと思っています。

 

例えば、ある野菜が地域の特産物としてブランド化され有名になると、新規就農する人が他県から来るようになる、そうして次第に人口が増えてゆけば、過疎や高齢化、後継問題などが少しずつ解決されるかもしれない。そんなふうに、商標制度を利用したブランド化が、地域活性化の糸口に十分なりえるのです。

 

近ごろは、地域の伝統産業や農産品に対してブランド化をどのようにすすめてゆけばよいか、をテーマに、弁理士としての視点でお話しさせていただくという機会が多く頂いています。

生産者の皆さんとの交流や、取材の機会を通じて、現場のリアルなお声をお聞かせていただいています。これらの情報を自分の中で再構築して、より具体的で実践的な情報にまで昇華させてから、セミナーに活かすようにしています。あるセミナーで、ある地域の知財活用の具体例を紹介したのですが、わたしのセミナーがきっかけで他の地域でも実践されることとなったと聞きました。とてもうれしかったです。

 

 

◯いま推し進めていっている地域の特産物はどんなものがありますか?

一番推している商品は、丹波ろじべじさんの「フレーバー甘酒」です。

この商品を企画された清水さんとは、丹波つながりで、友人だったんですが、そのご縁で知財面のサポートをさせていただいています。「夢丹(むーたん)」というとっても夢があるブランドなんですよ。

丹波地域を中心に、農業の活性化に熱い想いを持って取り組まれていています。他にも原料の生産に携わっている生産者の方々の想いとか、とにかくストーリー満載な商品なんです!

 

 

他にも、「くれぇ海老」といって、(アハマさんの地元である)広島県呉市で、陸上養殖されている、とても新鮮でおいしいバナメイエビがあります。こちらも一押しの新たな呉名物です。

 

“牡蠣に続く、呉の名物を作ろう”、ということで立ち上がられた地元呉の若手経営者の有志の方々が、EpoK合同会社を設立し、ゼ

ロから養殖ビジネスを立ち上げられています。私たちは、知財面のサポートをさせていただいています。冷凍装置を導入して、全国各地に発送したり、今では、全国でも珍しい自動販売機でのエビの販売も呉市で始められているんですよ。

 

くれえ海老(ロゴ) 登録商標 第6277644号

 

 

 

 


 

お客さまの手を取り、一緒に問題解決へと歩んでいるお二人。

弁理士として生産者さまをサポートされているだけでなく、自ら地域産業を掛け合わせたものづくりをされるなど、様々なことに挑戦されています!

ふるさと振興に尽くす気持ち、弁理士というお仕事の域を超えた幅広い活動を後編にてご紹介いたします☺️

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お二人イチオシ、丹波ろじべじさんの「デザート甘酒」が試飲できる座談会をイチニーマルにて開催いたします!

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